民法改正で不動産投資はどう変わる?5つのポイントを事例とともに解説

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2020年4月1日、改正された民法がついに施行されます。120年以上も前の明治時代に施行された現在の民法が、現代に合わせて大幅に見直されるのです。

改正により、「不動産投資の世界においても大きな影響が出るのではないか」「何か対策を採る必要があるのではないか」と不安を感じている方もいらっしゃるかと思います。

 

今回は、民法改正で変わる不動産投資関連についての情報を詳しく解説し、民法改正にあたり、不動産投資家が行うべき対策もあわせてご紹介します。

 

不動産投資、2020年4月の民法改正で変わること5つ

今回の民法改正では、不動産の売買契約に関連する「債権法」の内容について、大きく5つのポイントが見直されることになりました。1つずつ事例を交えてご説明します。

 

①瑕疵担保責任は、契約不適合責任を問う規定になった

不動産の売買契約における「瑕疵担保責任」とは、物件などの目的物が売主から買主へ引き渡された後に、買主が「隠れた傷」などを見つけた場合、売主に損害賠償責任が発生するというものです。

改正前は、隠れた傷が見つかっても、債務不履行にはなりませんでした。

 

民法改正後は、「隠れた瑕疵」に限らず「見える箇所」においても、売買契約時に決めた内容に目的物をきちんと適合させてから引き渡す、という義務が発生します

これは「契約不適合責任」という言葉で民法に表記されることになり、契約内容の不適合による追完請求権や代金減額請求権なども認められるようになります。

 

◇具体的な事例で理解しよう

改正前は、マンションの売買で雨漏り・給排水管の故障・近隣の騒音など、実際には隠れていて見えないトラブルについて契約後に気がついた、といった場合、売主の責任となっていました。

改正後の契約不適合責任では、売主側の責任の対象が種類、品質、数量まで含まれることになり、目に見えるエアコンなどの設備についても、契約書に表記された内容に合っているかどうかが問われることになります。

 

また、契約責任として、売主へ不適合設備などの補修や、補修が難しい欠陥については、物件価格を減額するよう請求することも可能です。

売る側としては、物件の状態を契約書と適合させておくことが重要となります

 

②売主が危険負担をし、買主は契約解除によって債務を拒絶できるようになった

不動産物件など目的物の売買契約を終結後、引き渡し前に目的物が自然災害などによって消滅した場合、現物がなくなってしまったにもかかわらず、契約が優先されます。

実務的には、買主の支払い義務が残るのを回避するため、売買契約時に買主負担で特約を結ぶことがほとんどです。

 

改正後には、目的物が消滅し取得できない場合、買主側から代金の支払いを拒絶、もしくは契約の解除をすることができます

結果的に売主側が損をしてしまうことから、売主が危険負担をする形となります。

 

◇具体的な事例で理解しよう

不動産投資物件として所有していたマンションの部屋を売却することに。

2月1日付で売買契約を終結し、3月20日に物件の引き渡しと代金支払いを行う予定であったものの、3月1日に建物の火災により物件は住めない状態となりました。

この場合、買主側から契約の解除を申し出ることができます。

 

③賃借人に修繕権が与えられるようになった

アパートやマンションなど賃貸住宅において設備が故障し、修繕が必要となった場合、改正前は賃貸人(貸主)に修理依頼をするという方法しかありませんでした。

民法改正後は、賃貸人に依頼するだけでなく、賃貸人の許可なく賃借人(借主)が設備を修繕することができるようになり、その修繕費用を賃貸人へ請求することも可能となります。

 

「大家さんへ設備の修繕を依頼してもなかなか対応してくれない」というトラブルに遭遇した場合に、大家さんの許可がなくても、入居者が自分で修理することができるのです。

 

◇具体的な事例で理解しよう

不動産投資のマンションを賃貸管理していて、備え付けのエアコンが故障した場合、オーナーの許可なく入居者が修理の手配をすることもあるでしょう。

この場合、後で高額な修理代を請求されるという事態になる可能性もゼロではありません。

こういったトラブルの予防として、しっかりした管理会社など、間に第三者を入れて管理を依頼しておくのをおすすめします。

 

④原状回復義務について明文化された

賃貸物件を退去する際の原状回復義務については、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」である程度は規定されていたものの、法律化はされていませんでした。

新しい民法では、「壁紙の変色・設備の損耗など経年劣化によるものを除き、賃借人の使用による傷などの損害は、賃借人が原状回復をする義務がある」とはっきりと記載されることになります。

 

一方、経年劣化による壁紙や設備の損耗については、交換など原状回復の費用として敷金を充てることはできなくなります。

あくまでも敷金は、賃借人が家賃を滞納などしたり、賃借人の過失による設備の損傷を原状回復しなかったりした場合に限り、その費用に充てることができる担保という認識です。

 

◇具体的な事例で理解しよう

区分マンションのオーナーで退去が発生した場合、次の入居者のために壁紙を交換したりハウスクリーニングをしたりする際には、前の入居者から預かった敷金をその費用として充てることはできず、オーナーである賃貸人が負担することになります。

原状回復として敷金を充てることができるのは、前の入居者が間違ってつけてしまった傷やペット飼育による壁紙の破れ・臭い・シミ、タバコによる焦げ跡などの修繕が発生した場合です。

 

⑤賃借物件の一部が使用不能になった場合、家賃減額や契約解除を請求できるようになった

地震や台風などの自然災害により賃貸物件の設備が故障して使えなくなった場合、入居者からの要望があったときに、家賃減額の対策をすることになっていました。

今回の民法改正により、設備の故障などが入居者の過失によるものではなく、賃貸借契約に記された設備が機能を果たさない場合、オーナーには家賃減額の措置をする義務が発生します

この場合、入居者は違約金なしで契約解除を請求することも可能となります。

 

◇具体的な事例で理解しよう

昨今多い台風による被害で、マンションのエアコン室外機が故障し、入居者は1ヵ月の間エアコンを使用できなかったという場合、オーナー側からその間の家賃の減額を申し出る義務があります。

また、家賃が減額された後も、何らかの理由でなかなかエアコンの修理がなされず、居住性が保たれない場合には、入居者は違約金を支払わずに賃貸借契約を解除することができます。

オーナー側としては、実際に設備の故障により家賃を減額する場合に慌てないようにするためには、その減額家賃額を契約書にあらかじめ記載しておきましょう

 

不動産会社に相談のうえ、契約書の内容調整が必要

今回の民法改正により、不動産投資を行う上では、売買物件の買主や、賃貸物件の入居者へ有利になる項目が多く追加されたと言えます。

買主から請求できることが増えましたので、オーナー側はあらかじめ契約書において責任や保証の範囲をしっかりと記載しておく必要があるでしょう。

 

不動産会社に相談すると、保証会社を介すなど対応してくれますので安心です。

 

まとめ

不動産関連の規約について、日本はこれまで法律として明文化されていなかった部分も多かったため、売買契約や賃貸借契約において、トラブルも多く発生していました。

不動産投資をしている方やこれから始めようとしている方は、ご紹介した民法改正のポイント5つを把握し、信頼できる不動産会社に相談し、適切な対応を心がけましょう。

 

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